正直、いわゆる啓発本はあまり好きではなくて、大抵は著者おすすめのツールの販促臭が鼻につくし、後段になって著者の講演日程なんかページの大半を埋めている本が多くてウンザリするものだから。それでもこの半年の間資格試験勉強のためその手の本をいくつか読んでみて多少なりとも得るところがあるわけで、この本もそんな啓発本つながりで購入した一冊。初版が1986年ということでいささか古いこともあって、インターネットもパソコンの紹介もないし、セミナー案内もないところがいい。
面白かったなと思うのは、アイディアは手帖に書き留めておいていったんは忘れてしまう。そしてしばらく寝かせた後で見返してその輝きが失せたと感じたなら惜しげもなく捨ててしまうという考え方。つまり、はじめからうんうん唸っていい考えをひねり出そうというのではないというところに希望を感じさせる。この考え方は徹底していて、
忘れるものは価値観にもとづいて忘れる。おもしろいと思っていることは、些細なことでもめったに忘れない。価値観がしっかりしていないと、大切なことを忘れ、つまらないものを覚えていることになる。
とか、
思考の整理には、忘却が最も有効である。自然に委ねておいては、人間の一生の問題としてあまりにも時間を食いすぎる。
など、とにかく「忘れてしまえ!」のオンパレード。もちろん、ただただ忘れるというのではなく、何を忘れるべきか・捨てるべきか常に点検していく必要がある。耳が痛いのは、
本はたくさん読んで、ものは知っているが、ただ、それだけ、という人間ができるのは、自己の責任において、本当におもしろいものと、一時の興味との区分けをする労を惜しむからである。
あぁ、結局僕がきちんと思考を整理できないのは、「労を惜しんで」いるからだな。要するに怠慢。
たえず、在庫の知識を再点検して、すこしづつ慎重に、臨時的なものをすてて行く。やがて、不易の知識のみが残るようになれば、そのときの知識は、それ自体が力になりうるはずである。これをもっともはっきり示すのが、蔵書の処分であろう。捨てるのではないが、本を手放すのがいかに難しいか。試みてみた人でないとわからない。ただ集めて量が多いと言うだけで喜んでいてはいけない。
考えやアイディアはいったんはメモ・手帖・蔵書という形で手元に置く。そして時間をおいてそれらの情報を見直してみる。おもしろいと思ったことが意外につまらなく思えたり、興味が失せてしまっていることもある。枯れた考えを後生大事にため込むことはしないでどんどん捨てて忘れる。そうした後に残った結晶を発酵・熟成させていく。
考えさせられた一冊だった。
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